文字通り言葉の聞き取りを検査するものです。聴覚は、単に音を聞くということだけではなく、人と人がコミュニケーションを取る上で欠かすことのできないものです。言葉を使ってコミュニケーションをする場合、声は聞こえても何を言っているのかが理解できないと意味がありません。そうした点からも、言葉がどの程度聞き取れているのかということを調べることは非常に重要だといえます。語音聴力検査(測定)では、日常会話で使われる語音、「ア」とか「イ」とかいう語音や数字が使われます。検査語音がどの程度の音の大きさだと何%正しく聞こえるかを調べる検査です。
外耳道や、鼓膜、耳小骨などの異常による難聴(伝音性難聴)では、音さえ強ければほとんど100%ことばを聞き取ることができます。蝸牛や、それより後の経路に異常がある場合(感音性難聴)では、ことばの聞き取りが100%にならないことがあります。
語音聴力検査(測定)には、目的によって2種類の方法があります。
読音聴取閾値(SRT)測定
1桁の数字リストを使って、聞くことのできる最小レベルを測定します。リストは1行に数字が6つあり、6行で構成されています。ヘッドホンをつけた状態で、「1」とか「5」といった読み上げられる1桁の数字を聞こえた通りに用紙に記載します。リストの数字は左から右へ、1行目から6行目へという順に読み上げられます。また、左から右に行くにつれて、音圧(音の大きさ)を10dB(または5dB)ずつ下げていきます。
6行目まで終了したら、縦の列ごとの正答率を計算します。正答率が50%の時の音圧が語音聴取閾値となります。通常、語音聴取閾値は純音の平均聴力と同じ程度になります。
語音弁別測定
「あ」等の単音節リストを使って、語音をどれだけ正確に聞き取れるかを測定します。
※音節:日本語の場合は、50音をそれぞれ1つの音節(単音節)と数えます。例えば、
「あ」「ぎ」等は単音節、「あさ」は2音節、「あたま」は3音節となります。
語音弁別測定に使用される単音節リストの語表には2種類あります。1表に20語の単音節があり8表から構成されている語表と、1表に50語の単音節があり同様に8表から構成されている語表があります。ヘッドホンをつけた状態で、読み上げられる単音節を聞こえた通りに用紙に記載します。まずは、1表を語音が十分に聞こえる大きさで測定します。1表の正答率が100%の場合は、1表の時よりも10dB低い音圧で2表を測定します。1表の正答率が100%未満の場合は、1表の時よりも10dB高い音圧で2表を測定します。表ごとに音圧を10~20dB変化させて測定します。音を強くしていっても100%にならないことが多くありますし、場合によっては、音を強くするとかえって聞き取りが悪くなるケースもあります。最高の正答率を語音弁別能といいます。
語音弁別能は、その人が持っている最高の明瞭度なので、補聴器を装用してもこの値が大幅に改善される訳ではありません。日常生活の中でのコミュニケーションを考えた場合、言葉を聞き取る能力である語音弁別能は重要な指標であるということができます。